前に戻る


極寒のゲームボーイ




文化祭の見張りの2日目、筆者は1時間遅れていきました。
だが、一部の人の目は冷ややかでした。

芸夢遊太郎 「4日連続で徹夜をするんだから、これからい多めに見てくれてもいいじゃないか。 第一、3年生は手伝う義務はないのに…」(必死)

必死の抗議も虚しく、あたりに漂う険悪な雰囲気
こんな状態で朝まで過ごさなければならないのか!!

こんな時はゲームをして、都合の悪いことは忘れてしまうのが一番です。
筆者は早速持ってきたゲームボーイを取り出しました。

「ソフトはこれしかないのか…」

そう、今年はポケモンカードGBしかないのです。
去年は後輩が聖剣伝説や星のカービィを持ってきてくれました。
だからこそゲームの力で苦しみを乗り越えられたのです。
しかし、後輩の持っているゲームボーイのソフトは既にクリアしてしまったので、 今年は自分で買ったソフトで遊ぶしかありませんでした。

「もっと金があれば…そうすれば、もっとまともなゲームを買えたのに…」

ちなみに、ポケモンカードGBは新品を100円で買いました。
そんなことを考えていると隣で後輩Dがゲームボーイを取り出しました。
よく見てみるとゲームボーイではなく、ゲームボーイカラーでした。
しかもソフトは今月に出たばかりの「テイルズ オブ ファンタジア なりきりダンジョン」です。

後輩D 「これ、今日買ったんです。」

そう言って、最新型のゲーム機で今月に発売された最新のソフトを楽しそうに遊ぶ後輩D。
かたや、11年前の旧型のゲーム機で100円まで値崩れしたソフトを黙々とプレイする筆者、芸夢遊太郎。

この差は一体何なんだ!!!
もし、筆者の近くにわら人形があったら、1秒のためらいもなく五寸釘を打ち付けていたことでしょう。

ネメシスで遊びたい!マリオランドで遊びたい!!
そんなことを考えながらゲームをすること4時間、差し入れを持ってきてくれた先輩がいました。
その先輩はなんと、普段言葉の暴力を振るう先輩Cです。

芸夢遊太郎 「(俺のためにわざわざ差し入れを持ってきてくれたのか… そうか、いつも酷いことを言うけれど俺のことを気にかけてくれているのか…)」

そんなことを考えてしまった筆者は馬鹿でした。
先輩Cがアイスクリームを取り出したのです。

芸夢遊太郎 「(何故、アイスクリームを?こんな凍えそうな寒さなのに…)」

ここで説明しておきます。
筆者が見張りをしているのは室内とはいえ、ホールのようなところなので、気温は外と余り変わりません。
しかも季節は冬、時刻は深夜、場所はアスファルトばかりの都心です。
もし、普段着で寝てしまったら確実に凍死することでしょう。
疑問に思っていると、先輩Cの口から信じられない言葉が出てきました。

先輩C 「食べるのは、そのアイスを食べてから。
そのアイス、高かったんだ。
君のために、わざわざ500円もするのを買ってきたんだ。

少し前に筆者は自分のことを馬鹿と書きましたが、それは間違いだったようです。
大馬鹿者です。発狂してます。
一瞬とはいえ、先輩Cに感謝してしまった自分が情けないです
先輩C!こいつはこんな嫌がらせをするために、わざわざ やって来たのかーーー!!!

激高した筆者は先輩Cに飛びかかり、真空飛膝蹴りをくらわせた。
先輩Cは痛みでよろめく。
そこを筆者が羽交い締めで首を締め上げる。
先輩Cは気絶した。

なんてことをする体力も気力も寝不足と疲労で青息吐息の筆者にはありませんでした。
それどころか、怒る気力さえ既になかったのです。

先輩C 「君がアイスを食べ終わるまでは帰らないから」

先輩Cは笑みを浮かべて、筆者がアイスを食べるかどうか見ています。
どうやら本当に、筆者がアイスを食べるまでは帰るつもりはないようです。

芸夢遊太郎 「(これを食べれば夜食代が浮く。とりあえず少しだけ食べてみよう。)」

そんな浅ましいことを考えてしまった筆者はアイスクリームを食べ始めました。
しかし、意外にも体はそれほど冷えませんでした。

芸夢遊太郎 「(なんだ、大して冷えないじゃないか。これだったら全部食べられる。)」

愚かにも、睡眠不足で思考能力が低下していた筆者はアイスクリームを全て食べてしまいました。
先輩Cはそれを見て満足げな笑みを浮かべて去っていきました。

悲劇はすぐに起こりました。
胃の中で溶けたアイスが体を冷やしはじめたのです。
体の外からは外気、中からはアイス、2重に冷やされた筆者の体温は急激に低下していきました。

芸夢遊太郎 「寒い…寒いよ…

こうして、心も体も冷え切った状態で筆者の文化祭は終わったのでした。


芸夢闘争記に戻る

トップページに戻る